新型コロナウイルスに関連した書籍②
[個人的・極主観的読書感想文]
『コロナの時代の僕ら』
パオロ・ジョルダーノ/飯田亮介・訳/早川書房
「僕らは戦争をしているわけではない」
いきなり「著者あとがき」の紹介になってしまうのですが。
「政治家にジャーナリスト、コメンテーターが繰り返し使い、医師まで用いるようになっている。『これは戦争だ』『戦時のようなものだ』『戦いに備えよう』といった具合に。僕らは戦争をしているわけではない。僕らは公衆衛生上の緊急事態のまっただなかにいる」。
日本でもありました。「自粛警察」や「今はコロナで自粛中だから我慢」や「緊急事態なのに緊張感が足りない」といった会話や記事が。でも著者は「今度の緊急事態は戦争と同じくらい劇的だが、戦争とは本質に異なっており、あくまで別物として対処すべき危機だ」と冷静に伝えます。
読む者に励ましのメッセージとして伝わる
もう一つ示唆に富む本文を。「今、僕たちが直面している状況では、ありとあらゆる反応が予見される。怒る者もあれば、パニックにおちいる物もあるだろう。冷淡な反応もあれば、シニカルな反応もあり、信じられないと思う者もあれば、あきらめる者もあるだろう。その点を心に留めておくだけで、普段より少しひとに優しくしよう、慎重になろうとすることができるはずだ」。ことばの一つ一つが、読む者に励ましのメッセージとして伝わり、パニックになりそうな自分が「はっ」と正気に戻れ、冷静になることができます。
落ち着かせる「何か」をじわり染み込ませてくれる
訳者あとがきによると「本書は2020年2月29日から3月4日までの日々の記録を兼ねたエッセイ集」とのこと。その間わずか1週間足らず(!)。著者の文章をすべてここに掲載できませんが、伝えようとしていることばが、新型コロナウイルスの流行のなかでおののき震えている者へ、心を落ち着かせる「何か」、冷静に戻れる「何か」を、じわりと染み込ませてくれるのです。本書では、「もはや世界の感染者数が10万人に迫るなか」とありますが、今や世界で4,550万人(回復者3,060万人・2020年10月30日現在・Googleデータ)の感染者数です。もう一度、著者に『コロナの時代の僕らPart2』を期待するとして、今なら、著者はどのようなことを感じ、私たちに発信してくれるでしょうか。
本書を穏やかに読み進めてゆけたのは、翻訳者のなめらかな不安のない文章に負うところも大きかったと思いました。